リレーコラム



2015年3月
「買ってやる」と「買わせていただく」  
     一般社団法人日本資材管理協会 主任研究員 / 中小企業診断士 向川 虎隆
 
 今は退いたが、長年「買う立場」でほとんど仕事をしてきた。一般的に、この「買う立場」というのは、「売る立場」より強いとされる。売るのは難しいが、買うのは簡単と思われがちである。営業のノウハウ本は氾濫しているが、調達のそれは、あまり見受けない。

 この辺の事情が、調達の仕事をしてゆくうえで、時に悪く作用する場合がある。「買ってやる」という、態度や考え方でも仕事ができてしまうのである。「売ってやる」では営業の仕事ができないのとは、対照的である。この習性が身について、上から目線、傲慢ともなる人を時折見かける。もちろんほんの一部の人であるが、一種の職業病ともいえる。  調達部門の新人教育の場とか、若い人たちへの話のなかで、常々言ってきたことがある。それは「大会社の看板で仕事をしないで、自分の実力で勝負しなさい」とか、「相手はあなたに頭を下げているのではない、意識的に謙虚な気持ちを忘れないように」等である。

 調達の仕事の本質は、「買ってやる」ではまずいわけで、やはり「買わせていただく」なのだと思う。営業なら、お客様に満足していただくために「売らせていただく」なのだが、調達の場合は誰のために「買わせていただく」のか。それは少し間接的になるが、最終的にその調達材が商品になった時の、お客様であることには変わりがない。サプライチェーンだのバリューチェーンだのと言うより、このほうがわかり易いかも知れない。

 こう考えると「買わせていただく」は、そんな簡単な仕事ではない。サプライヤーとの前向きな協業関係を構築できるとか、設計はじめ社内関係者に、有用な情報を発信できる等の資質が必要になってくる。言われたものを買ってくるだけでは務まらないのである。 調達は本来奥の深い、やりがいのある仕事なのである。調達担当者には、輝きのある仕事ができて、真に経営を左右できるほどの、強い調達部門になって欲しいものである。 



 
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